
それから投薬の経路がその患者さんにとって適当なものかどうか、またその薬剤がその患者さんの痛みにとって十分なものであるかどうか、たとえばラダーの二番目のコデインのような鎮痛薬を使っている場合、そして6時間内に電撃痛が生じている場合、強オピオイドをその患者さんは必要としています。それから用量が適当であるかどうか。われわれはモルヒネを使う場合、問題が起こるのではないかと心配で、少なめにモルヒネの用量を設定することが多いのではないかと思います。
まだほかにも疼痛の評価ということでお話ししたいことはありますが、ここでAndrewにバトンタッチしたいと思います。
疼痛のための三つの薬
Andrew 癌の寒痛管理に使われる三つの薬についてお話しします。ビスワォスティネートの使用、非オピオイドその他の代替薬、それから日本ではあまり使われていないと聞いていますがメサドンの使用ということです。
メサドンを使っている方はいらっしゃいますか。
−日本では使えません。
Andrew メサドンの最近の実例から実験的に日本で使ってみる理由は十分にあると思いますので、あとでディスカッションができればと思います。
最初の薬、ビスワォスティネートはみなさんなじみのある薬でしょうか。日本でよく使われるのはパミドロネート、商品名ではアレディアですか。クロドロネートを使っている方はいらっしゃいますか。パミドロネートがあればこれは要らないでしょう。
悪性の高カルシウム症の臨床的な症状についてはみなさんご存知でしょうか。だるいとか吐き気がする、嘔吐がある、便秘があるとか、ここに書いてあるとおりなのですが、1980年代の半ば、1985年ぐらいにはカルシウムを正常のレベルまで下げれば疼痛の管理がうまくいくというような説がありました。そういう一つの説が出回っていた時と同じくして、ビスワォスティネートのいろいろな形の薬が出たという偶然の一致がありました。高カルシウム血の処理の方法としてはリハイドレーション、加水法というのが行われます。いま私どものところで標準的に使っているのはパミドロネートまたはクロドロネートであって、カルシトニンとかミトラマイシンなどは最近では使わないようになっています。ビスワォスティネートに属する薬ですが、経口では吸収が悪いというのが一般的な特徴です。ビスワォスティネートの中でもクロトロネートは経口で飲めるような製剤ができていて英国その他2,3の国で出回っています。
カルシウムレベルが正常でさえあれば、癌患者に対してビスワォスティネートは非常に効用がよいと熱っぽく説かれたことがありました。それから乳癌の骨転移の痛み、前立腺癌の骨の痛みもこのビスワォスティネートによって緩和されるというようなことが言われました。ビスワォスティネートで寒痛を緩和するという実際上の問題というのは日本だけではなく英国でもそうなのですが、静注で間欠的に投与しなければならないという問題があります。これは不便ですしコストがかさみます。経口にするには新たに開発を待たなければなりません。経口でクロドロネートを投与した場合の骨の痛みの結果ですが、主観的には痛みは緩和された、しかし鎮痛剤の投与量を減らすまでには至らなかったというのが緒論です。ビスワォスティネートに関する研究論文など読んでみたいと思われる方があったらコピーできますし、お手元にも一部関連の資料が入っています。
次のトピックとして、癌の痛みを緩和するために非オピオイドの利用ということを取り上げたいと患います。みなさんが実際に痛みの管理をしておられて、どういう痛みがいちばんコントロールが難しいですか。
−ヘルペスの痛みです。
Andrew そのとおりです。ヘルペスの痛みは神経損傷の起こす痛みであることが問題なのです。神経損傷による痛みはモルヒネの投与によっては緩和できる自信がないというのが私にとっても問題なのです。
Twycross先生が神経損傷に由来する痛みのコントロールのラダーを作られました。これはあくまでも案であって、一般化しているWHOのラダーほど定着しているものではないということを含んでおいてほしいと思います。
ステップ1ですが、三環系抗うつ薬、抗痙攣剤を使うこと、ステップ2は三環系のものと抗痙攣剤を併せて使う、ステップ3としてはクラス1の抗不整脈薬を使う、ステップ4ではオピオイドと局所麻酔薬ということです。
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